カモシカとエゾシカ
背景
毎日新聞.jpによると、JR東日本の「特急かもしか」のヘッドマークに描かれている絵は明らかにカモシカではなく、エゾシカに似ているという指摘があったとの事です。
「特急かもしか」のヘッドマークは、こんなデザインです。
【毎日.jp記事の写真を加工】
実際に「明らかに違う」と解るほどの違いがあるのでしょうか。調べてみました。
分類
記事の中にもありましたが、カモシカはそもそもシカよりもウシに近い生き物だそうです。
目:ウシ目(偶蹄目) > 亜目:ウシ亜目(反芻亜目) > 科:ウシ科 > 亜科:ヤギ亜科 > 族:シャモア族 > 属:カモシカ属 > 亜属:カモシカ亜属 > 種:ニホンカモシ
に所属するとされています。
一方、エゾシカの項目には詳細な分類が記載されていませんでしたが「ニホンジカ科ニホンジカの亜種である」との記述がありました。他のシカの項目を見ても「ニホンジカ科」という科はなかったので、おそらく「シカ科シカ属ニホンジカの亜種」の誤りでしょう。となると、エゾシカの分類は
目:ウシ目(偶蹄目) > 亜目:ウシ亜目(反芻亜目) > 科:シカ科 > 亜科:シカ亜科> 属:シカ属 > 種:ニホンジカ > 亜種:エゾシカ
ということになります。
ちょっと気になったのはニホンカモシカの分類には亜科と属の間に族というレイヤーがありますが、エゾシカにはないという点です。生物の分類のレイヤーがどうなっているのかという点についても機会があれば調べてみたいと思います。
話が逸れました。カモシカとエゾシカの分類上の違いの話に戻りましょう。
カモシカとエゾシカは亜目まで一致してますが、科が違う生き物と言って良いと思います。ちなみに、ウシ亜目には次の科があります。
マメジカ科、ジャコウジカ科、シカ科、キリン科、プロングホーン科、ウシ科
外見
分類上の外見は違っているのは解りましたが、実際の外見はどのくらい違うのでしょうか?
形が解りやすい写真を画像検索で探してみましたので、下記に引用します。
ニホンカモシカ
[かもしか君より]
エゾシカ
[社団法人エゾシカ協会より]
「特急かもしか」のヘッドマークの誤りを指摘した方が「明らかに違う」と言ったとおり、私のような素人から見てもはっきりと違います。
まず、エゾシカはニホンジカの亜種であるという分類のままで、見慣れたシカの形をしています(ただし、写真では解りにくいのですが、本州のシカよりも大きいそうです)。
一方、ニホンカモシカは、見慣れたニホンジカと比べると「首が短い」「足が太い」「角が枝分かれしてない」「色が茶色ではない」といった違いがあります。
「特急かもしか」のヘッドマークがエゾシカかどうかは私には解りませんが、「少なくとも(ニホン)カモシカではない」ことは解ります。
こう言っては天然記念物であるニホンカモシカに悪いのですが、絵になるのはエゾシカ等のニホンジカの方だと思います(顔は可愛いんですけどね)。「特急かもしか」のヘッドマークをデザインした人の意図はわかりませんが、ニホンカモシカのフォルムを忠実にデザインにしても、それがニホンカモシカことは解りにくいような気がします。
余談
- 「ニホンジカ科」で検索するとWikipediaの「エゾシカ」から引用した文章が沢山見つかります。逆に言うとエゾシカ以外のシカに関する記述が見つかりませんでした。Wikipediaを丸ごと信用するのはやめようと思いました。
- 「エゾカモシカ」という生き物はいないようですが、検索すると「エゾカモシカ」という記述をあちこちで見つける事ができます。
- 「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」という「ベルクマンの法則」があるそうです。例えばニホンジカの値域亜種であるヤクシカ(屋久島)とエゾシカ(北海道)では、4倍近い体重差があります。